顧客満足サービスの基礎トレーニングを無料で受ける方法

JUAS発行の企業ITサービス動向調査によると、顧客満足を最も強く意識している業界は、明らかに金融サービス業界だそうだ。ITを含むサービス産業におけるその指標の低さには驚かされるばかりだが。いずれにしても金融サービス業界からは、顧客リレーションのなんたるかを学びたいものだが、それを教えてくれと言っても競争力の源泉なのだから教えてくれるわけがない。

しかし、学べるシンプルな方法がひとつある。

もう使わないクレジットカードを決め、解約する。
1枚でもいいが、2枚くらいあるとしっかり学べる。

カード会員向けのWEBで?いやいや、いかんせん解約はわかりにくくしてあるものだ。いくらセキュリティにナーバスだろうと思われるカード会社のWEBサイトでも、そんなものからは意味のあることはほとんど学べない。

むしろ、カードの裏面に記載されている番号にすぱっと電話する。電話だよ、電話。

すると、とにかく顧客用件別に振り分けるため、自動応答につきあっていくつかの番号をプッシュ。「解約」一直線に選択していくと、やがてオペレータの女性(op)につながる。

そこで、すぱっと、さらっと、いやみなく言う。

「カードを解約したいんですが。」

opからの、個人を特定するためのいくつかの質問に答えると、解約手続きモードに入るんだが、opはたいてい、最終リベンジマッチを仕掛けてくる。これが、とても勉強になるわけだ。勉強なのだから、口調、タイミングも学びの姿勢で対応するように。ノートをとるなんてのもすばらしい。

一般的には、

「お客様の会員期限は○月までとなっております。そこまで年会費はかかりません。」
「大変残念なのですが、私どもに何か不手際がございましたでしょうか」
「お客様に何かご不便な点などございましたでしょうか」
「お客様のポイントは現在○○ポイントたまっておりますが、カードのご解約と同時に、こちらもお使いになれなくなりますが。」

と尋ねられる。普通は、いやみもなく「いえいえ」とか「はいはい」とか言って終わり。

ただ、ここで、なにがしかの変更だとか、WEBでめんどくさい手続きを、ここで解約理由として言えば、たいていの面倒な仕事は先方がある程度やってくれたりする。

そこで、「カードを持ってるメリットがあまりないような気がして」と言ってみる。

「最近無効になったポイントが多くて心が折れた」とかあれば、交渉カードとして使える。そこで、もっと具体的なオファーを自発的にしてくるカード会社もいる。

「今月、キャンペーンを行っておりまして、○○ポイントお受け取りになれますので、お持ちのポイントとあわせまして翌々月には商品券がお受け取りになれます。」

驚きのわかりやすいオファー。

なぜ「ポイントがもらえるキャンペーン」が急遽発生したのか意味がわからないけど、とにかくもらえるキャンペーンに理由を尋ねる客などいないのだろうね。もっとも、こちらには、それはそれでありがたく受け取るもよし。それにしても、解約したいと言う客の多くがここで延長し、しかも解約したかったことすら忘れる可能性があるわけだから、大したものだ。

ここで、たいていは新規入会キャンペーンでもらえるポイントより多かったりはしない、というところにサービスのヒントがある。

サービスには「新規顧客獲得コスト」と、「顧客維持コスト」がある。この場合、後者から拠出されているわけだ。実際には、新規顧客獲得コストのほうが高い。だから、カードをその場で無情にすぱっと解約し、別途新たに同じカードに入会すれば、年会費は発生しないし、さらに入会特典としてまっさらのポイントがゲットできたりする。

まあ、そこで、もうしばらくカードを持っておこうと思うのなら、opの勝ちだ。気持ちよく負けを認めよう。ただし、会員費用の更新月を確認しておく。たいていカードに記載されている「月」の前月末だろうと思われる。その場でPCでリマインダをしかけておけばいい。TODOリストとか、カレンダーソフトとか。そうすると、次回また解約の電話ができ、opは「前回は思いとどまってくださったのですが、今回はなぜ」とか言ってくるわけだが、そこでとりあえずおおよそカード会社op先生の授業は終わりだ。

マジな話、使わないカードをただ持ってるなんてリスクでしかない。単に解約する行動だけで、そのリスクを下げる。さらに、わかりやすい実利がある場合もある。先方から「顧客」と認められるような利用実態があれば、学びは大きくなる可能性は高い。かくして、良いサービスを選択し、その良い顧客になるのはwin-winである。

こういう、「複数の問題をいっぺんに解決する方法」は効果的だ。
一度試してみられては。学びの記録はぜひブログでお願い。